5分でわかる経理・財務業務(買掛債務管理)

前回2回にわたり「5分でわかる経理・財務業務(売掛金管理 #1、#2)」売掛金管理について解説しました。今回は「5分でわかる経理・財務業務(買掛債務管理)」というタイトルで、買掛債権管理の大きな流れを解説します。

はじめに:買掛債権管理とは

買掛債務とは、企業が「商品」や「サービス」の提供を購買することで生じた代金のうち、未払い分を支払う義務をさします。企業の負債のひとつに数えられます。
仕入取引、購買で発生する代金は、即時現金利用で支払うことはなく、後日、振込や手形で決済する「掛け取引」が多くの企業の基本です。掛け取引は後日決済、または後日支払になり、取引者間相互の信用関係によって成立します。そのため、掛け取引は「信用取引」とも言います。後日、決済または支払が実行されるまで、企業は仕入先から資金を借りた扱いとなり、「債務」を持つことになります。

買掛債務

「買掛」という語から最初にイメージしていただきたいのは、これは「仕入業務」だと認識することです。モノを売るための「商品」や「サービス」の購買、これを「買掛」という言い方をし、仕入以外でモノを買うときは「経費」の支払いとなります。ここで使用する勘定は「未払勘定」であり「買掛勘定」と異なるので注意が必要です。

買掛債権管理

購買業務


購買業務は仕入取引です。新しい取引先と取引を開始するには購買契約が取り交わされます。そのための確認が上図の「2.1.1. 契約条件検証」であり複数のプロセスがあります。「決済条件」「契約書そのものの文言チェック」もここでの確認項目です。経理業務で押さえて欲しいポイントは「下請法(遅防法)」です。「60日ルール」「消費税端数調整」の二点が特に重要です。下請法は「親事業者による下請事業者に対する不利な行為の取り締まり」を決めた法律です。消費税と取引債と自社とで丸め方が異なる場合下請に損になる方法で支払いした場合、下請法違反になります。
契約書を交わして実際の取引に入ったプロセスが「2.2.1.仕入計上【入荷基準】」「2.3.1.仕入計上【検収基準】」です。一般的な企業はほぼ【検収基準】を利用します。実際の入荷は「売上計上基準」の裏返しであり、モノが届いた時点で【入荷】、そこから実際受けいれるにあたり「検品」や「確かに発注したものが届いた確認」として【検収】を行います。これが「仕入計上」です。具体的に相手勘定である「買掛金勘定」を立てることになります。
「2.4.1.期日別債務残高管理」は期日別、支払期日別ごとに内訳で財務残高管理することを経理業務として行っています。ここでも年齢調べレポートが登場します。


業務マップ内に記載がありますが、「下請法確認」はこのタイミングで行います。60日ルールに抵触がないか確認します。

実際に取引先から請求書が届いた後、「2.5.1.請求内容検証」内「決済承認」を経て支払い業務に進みます。発注したモノを受け取った部署は経理に支払いを依頼します。「2.5.2.支払依頼」
支払依頼承認後、「2.5.3.債務消込」を行い、「2.5.4.支払実行」に進みます。実際の支払いは財務部門の担当になります。

債務残高管理


債務残高管理は仕入別に管理を行います。「2.6.1.仕入先別元帳管理」「2.6.2.個人債務残高管理」があります。「2.6.1.仕入先別元帳管理」は論理的に管理されています。お客様によって呼び方はまちまちで、補助元帳の一つとしてどのお客様ももたれています。「2.6.2.個人債務残高管理」で確認が必要なのは「赤残債務」です。「赤残」と聞いたら「マイナス」を意識すると良いでしょう。債務がマイナスなので、取引先から「払ってもらう残高」を意味します。
債権残高管理は「顧客別債権管理」と「期日別債権管理」の二つに分けられます。

値引・割戻


「値引・割戻」は「売掛管理」と逆の内容になります。モノを大量に購入したときに「値引・割戻」に該当するか検証します。「値引」と「割戻」はどちらも単価・金額を差し引くことですが、タイミングによって区別します。「値引」は取引時に、「割戻」は取引後に行います。
支払いを取引先に求めるため「2.8.1.請求手続」での「請求書作成」が必須です。請求書発行後入金されます。入金は財務の担当となるので、「出納管理」の扱いとなります。最近は「インボイス制度」を聞くことが増えています。「値引・割戻」業務内での請求書は、インボイス制度下での「資格返還請求書」に該当します。

インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁 (nta.go.jp)

問27 返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格請求書発行事業者は、何か対応が必要ですか。【令和5年10月改訂】

問28 売上げに係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、当該対価返還等に関し適格返還請求書を交付する義務が免除されるとのことですが、1万円未満の対価返還等とは、どのような単位となりますか。【令和5年4月追加】【令和5年10月改訂】

問27、問28、どちらの場合も返還交付義務が1万円未満を基準に「交付義務が免除される場合」「免除されない場合」があるので確認が必要です。

まとめ

買掛債務管理について解説しました。会計上の「買掛金」による取引は企業間の信用によって行われており信用取引ともいいます。信用の上に成り立っているため、支払い遅れや漏れは信用に傷をつけることにつながり注意が必要です。買掛金の計上、台帳管理、消込、請求書突合など買掛金管理には手間やコスト、会計スキルが要求されます。弊社ERP事業部ではお客様の会計関連業務を理解したご提案が可能で、豊富な実績をもった技術者によってお客様の業務課題、IT課題の解決に貢献します。

おまけ

2023年10月施行のインボイス制度を企業財務会計内で滞りなく運用できているでしょうか。取引先との買掛金・売掛金を効率的に処理するための制度としてこの制度ができましたが、まだまだ扱いに悩んでいらっしゃる企業様も多いのではないでしょうか。弊社ERPスタッフは、買掛債務管理、インボイス制度について社内トレーニングを実施。製造、サービス、金融をはじめとしたさまざまな業種の、大手企業から中堅企業までを幅広く支援させて頂いております。お客様のビジネスを深く理解したご提案が可能です。お困り事がございましたらお気軽にご相談ください。
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