過去コラム3回にわたり経理・財務業務について解説しました。
「5分でわかる経理・財務業務(売掛金管理 #1、#2)」で売掛金管理について、「5分でわかる経理・財務業務(買掛債務管理)」で買掛債権管理の大きな流れについて説明しています。今回は経費管理について解説します。
はじめに:経費管理とは
経費は、事業の遂行のために使用した費用を指します。「人件費」「消耗品費」「接待交際費」は経理業務に詳しくない方でも聞く機会が多いのではないでしょうか。事業のための「経費」になるもの、ならないものを把握し管理することが重要です。利益は売上から経費を引いた差額のため、経費管理は適切かつ厳正に行われます。
経費管理は、企業での支出の把握、資金利用が適切であるかを確認・調整を行うことです。支出は企業の事業運営に関わる部分であり、企業存続のための確認や調整業務は欠かせないものです。企業内の各部署から申請される経費が適切であるか、また会社の経費としてふさわしいものであるかの確認は企業にとって必要不可欠の業務になります。経費管理を適切に履行することは、会社の健全な運営のための土台部分といえるでしょう。
今回は「経理業務」を「年度予算管理」と「日常管理」の大きな二つの項目に分け、それぞれの内容を解説します。
会社の運営に「購買」は必須ですが、「売上」と「経費」は明らかに異なります。「売上」に直接関わるものは「売上原価」項目に仕訳されます。購入した後、使用して終了のものは「売上原価」でなく「経費」として計上されます。
年度予算管理は、企業の数値目標管理に必要となる業務です。これは会社の利益を生み出すために重要な管理です。
年度予算策定、予算実績対比の流れで業務は進みます。
日常管理は「通常経費処理」、「仮払決済」「差額決済」の流れになります。
ミニコラム①
「業務委託」「部門内業務一部委託」は経費としてどのように扱うか説明いたします。
会社が買うものは「売上」と「費用」に分かれます。売上に直接関わるものは「売上原価」項目として仕訳されますが、「売上原価」に入らないものは「経費」の扱いになります。「費用」項目に仕訳されるものは一回の購入後使用したものが該当します。自社がA社に案件で入ってもらう業務委託費は、売上原価として経費に含まれます。売上に直接関わる事案のためです。これに対して、A社が社内常設部門を一部C社に委託する場合、これは売上に直接関わらないので経費の扱いになります。
年度予算管理
「年度予算管理」は企業が将来に向けて計画した、目標達成への予算策定、データ提供・部門別方針示達・予算調整を行う一連の活動を指します。経費予算は各部門から前年実績をもとに経理宛てに提出されるものです。
年度予算策定
「策定参考データ提供」「部門別方針示達」「予算調整」この流れで進みます。
「予算」は「企業が限られた資金を有効かつ効率的に活用する為、どの部門に、どの項目に支出するかを計画」するために策定されます。
予算実績対比
「予実対比検証」を行います。
予算実績(予実)対比は「予算をベースとして事業活動を行い、その結果としての実績値との比較、差異分析」を行うことです。
ミニコラム②
「財務会計」と「管理会計」の違いをご存じでしょうか。どちらも企業の会計活動ですが役割が異なります。
「財務会計」の目的は外部の利害関係者向けに、企業財務の状況や経営成績を報告するものです。外部の利害関係者は投資家、債権者、税務署などです。財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作成、開示を行います。法令に基づいたもので、これにより企業の状況を株主や金融機関が把握できます。また、投資や融資の判断材料になります。
「管理会計」の目的は内部の人々(役員、管理者など)にあてたものとなります。自社状況を把握し、意思決定に役立てるための会計といえるでしょう。経営分析、予算策定、事業改善施策がこれにあたり、作成情報は各企業、独自のものとなります。
財務会計=外部報告目的・・・株主に対して財務諸表を作成する
管理会計=内部管理目的・・・予算(内部管理目的)を扱う
日常管理
「日常管理」業務は、「通常経費処理」、「仮払決済」「差額決済」の流れで進みます。
通常経費処理
「通常経費処理」は「処理指導」「大口経費申請検証」項目があります。
仮払決済
「仮払決済」は「使用内容精査」「振替計上」項目があります。
差額決済
「仮払決済」後「差額決済」に進みます。こちらでは「差額決済」「支払依頼」「支払」「入金」「計上」項目があります。
経費発生パターンは以下のものがあります。
1. 他部門からの依頼により経理部門が現金や振込によって社外に直接支払う(例「業者払」など)
2. 社員が立替払いをし、後日経理部門がその社員に支払う(例「立替経費」)=経費精算
3. 予め社員に概算金額を手渡し、社員が使用した後で、過不足精算する(例「仮払精算」)
例)出張旅費、最近は仮払い支給が減っている
ミニコラム③
損金経理とは、法人税法上の損金であり「所得計算上控除を可能にするために課される要件」をいいます。会社確定の決算で費用又は損失として経理することを指しまう。「損金」は、損をして失った金銭で、会計上の費用とは異なります。会計上の利益計算は収益から費用を差し引いて求めるが、法人税の計算では利益を課税所得、収益を益金、費用を損金に置き換えて計算します。
損金算入:税法上の費用
損金不算入:会計上は費用で処理できても税金の計算上は費用として認められないもの
ミニコラム④
「交際費」は言葉として聞くことが多いと思いますが経理処理的に様々なケースがあります。税務上は「費用」としてみなされない項目です。例えば取引先への贈り物する場合、ノベルティグッズ(カレンダー、手帳など)を送るときは「交際費」でなく「広告宣伝費」に該当します。贈り物のすべてが「広告宣伝費」に該当する訳ではなく、便宜提供として特定の取引先に高価なものを贈る時「交際費」とみなされる場合もあるので注意が必要です。
まとめ
経費管理について解説しました。ひとくちに経理と言うことは簡単ですが企業内の「経費管理」業務は社内各部署に関連し、企業の事業運営に関わる大切な業務です。企業存続のための確認や調整業務は欠かせないものであり地味で必須なものと言えます。
経理・財務は「過去のお金の流れを管理」し、会計は「未来のお金の流れを管理」します。「過去のお金の流れ」を管理するには、知識と経験が必須です。会計上だけでなく税務上でも正しく勘定をつかいわける高度なスキルが求められます。
経理・財務業務でシステムを使用するお客様の目線に立ち、効率よく使用していただくにはどうしたらいいか、若いスタッフをどう育て、勉強してくのがベストか社内で日々研鑽しております。
おまけ
経費管理の運用でお困りのことはございませんか。社内で使用している勘定項目が税務上正しいものか扱いに悩んでいらっしゃる企業様も多いのでは。弊社ERPスタッフは、経理財務について社内トレーニングを定期的に実施しており、技術だけでなく会計、税務についての知識を社内で共有しております。
弊社ERP事業部ではお客様の会計関連業務を理解したご提案が可能で、豊富な実績をもった技術者によってお客様の業務課題、IT課題の解決に貢献します。困りごとがございましたらお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら